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風の吹くまま、気の向くまま

感じたことを、思いつくままに。
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星の子

実は娘に薦められて『むらさきのスカートの女』を読みまして。
で、なんかこの人の作品もうちょっと読んでみたいな、と思って図書館で借りてきたのがこれ。
結論から言うと、私的にはすごくよかったです。おもしろかった。色んな意味で。
以下、多分全然まとまらない感想ですが思ったことをつらつら書き連ねます。ネタバレが嫌な方はお読みにならないでください。まとめるのが下手くそなのですごく長くなりそうです。


この作品、先が気になってどうなるんだろう、と思ってなにがしかの結論とか、種明かし的なこととかを期待して読むと肩透かしを食いますね。私はそうでした。全部が「私」という中学生の女の子目線で書かれているので、裏側もへったくれもなく、ただ日常の出来事が淡々とつづられていきます。「これが正」「これは間違い」とか、そういうジャッジもありません。ただ、女の子目線で、周りの人たちの反応や言葉、そしてそれに対する女の子の感じたことがストレートに書かれているだけ。いや、もしかしたらそれも、書かれてないこともあるかもしれない。
色んな人が登場しますが、体が弱いわが子(=主人公)を何とかしようと新興宗教にすがりつく両親、その新興宗教(というか、「水」)がおかしいと思い始めて両親の目を覚まさせようとし、結局は家を出ていく姉。
「私」の両親がおかしな宗教にかぶれていることで、周りの友達の反応も微妙です。その中で、辛辣だけど正直で、ありのままの「私」を色眼鏡なしで見てくれる「なべちゃん」がすごく好きでしたね。あんな中学生女子いるのかな。彼女はとても聡い子で、「私」の両親のことも変な宗教のこともちゃんと分かった上で「私」と友達でい続けてくれます。それも、変にべたべたしたり同情したりするんじゃなく、本当に自然で無理がない。すごく仲が良いわけでもないけど、肝心な時はそばにいる、そんな感じです。そのなべちゃんの彼氏もすごく人が良くて、馬鹿だけど誠実な感じです。「私」も彼らもみんな等身大の中学生っていう感じ。「私」は面食いで次々に色んな男の子に片思いをして(それをなべちゃんに冷ややかな目で見られている)、最後に好きになったのは、3年生の時に赴任してきたイケメンの先生。その先生がテニス部顧問になったから、「私」は3年生なのにテニス部に入部しようとします。すげなく断られますけどね。(笑)それくらい、素直で正直というか、子供なんですよね。変な見栄とかがないのは彼女の性格なのかなぁ。
両親のことも、「私」は何も疑問に思わず、家がだんだん貧乏になってどんどん小さな家に引っ越していったり、普段ロクなものを食べさせてもらえずいつも空腹でいることも、特に不満な様子もなくただただ普通に受け入れているようです。両親の愛情は絶対に間違いないし十分すぎるほどたっぷりと注がれていることが大きいのかな。ただ流されていて言いたいことも言えないわけでもないのです。両親とは何でも話すし、変な子に迫られた時はグーパンチで抵抗したりもできる。(笑)
この作品を読み終わって思ったのは、何が正解で何が間違っているのか、そして何が幸せで何が不幸せなのかというのは、その人によって違うということ。
「私」は成長するにつれて、自分の両親はいわゆる「普通」ではないのだ、周りから見たらおかしいのだ、ということを実感するようになります。それでも愛情は揺るがない。親戚に、うちに来ないかと言われても拒絶するし、その宗教の合宿(?)みたいなものに行って両親と丸一日会えないだけで妙に不安になったりします。それは見ようによったら依存させられていると言えなくもないかもしれませんが、両親の愛情は本当に本物。(だからこそ厄介だと言う人もいるでしょうが)
最後の親子三人で星を見るシーンは、同じ空を見ているのに、両親が見える流れ星が「私」は見ることができず、逆に「私」が見えた時には両親は見えない。これをどう捉えるかは読んだ人次第だと思いますが、私は、くしゃみを連発しながらも「絶対に3人で一緒に見るんだ」と言って頑張り続ける両親と、その間に挟まれて時間を気にしながらも「全然寒くない」と感じる「私」にすごくじんわりきました。お互いに理解しあえなかったりすれ違ったりしても、とにかく一緒に身を寄せ合って、何かを追うということは素敵なんじゃないかな、と。この家族の幸せはこの家族が決めることで、周りが決めることではないと思うんですよね。
そんなこと言うと、今いろいろ、いわゆる宗教二世の問題があるなかで、虐待だとか洗脳だとか言われるかもしれませんが、宗教二世がみんな不幸なのか、というとそれも何か違うと思うし。もちろん、抜け出したい、抜け出させたいと思って助けを求めるなら手を差し伸べることは当然なんですが、大きなお世話だと思われることだってあるんじゃない? と思ってしまいました。
まあとりあえず、「私」は一応ちゃんと生活しているし進学もできるようだし、貧乏だけどそこまで困っているようにも見えないのでね。

もういい加減長いので、誰もここまで読んでないと思いますが、あと一つ、「人のうわさ」ほどいい加減なものはない、と思わせるようなエピソードが二つありました。一つは全くのデマだと分かるんですが、もう一つは何が真実なのかは最後まで分からずじまいです。というか、もしかしたら、どちら側から見るかによって真実も変わるのかな、と。Aから見たら、Bを救ってあげようとしただけで悪意はなかったのかもしれない。でもBは「騙された」「強要された」と思ったかもしれない。それも違っているかもしれないけど、少なくともAを信じている人たちから見たらBは頭がおかしくて、ただ難癖をつけているだけのように見えるし、「本当はどうだったのか、事実が知りたい」と言うこと自体がAに対する裏切りのように受け取られてしまう。こんなことは現実にも溢れてるよなー……と、そんなことも考えさせられました。

色んな人がいて、いろんな人生があり、その人それぞれに正義があり、幸せがある。

最後のシーンはとても好きです。ちょっと、三浦しをんのとある作品のシーンを思い起こさせました。このエンディングがハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、と訊かれればどちらでもないと私は思います。ただ事実をありのままに描いてあって、それが是なのか非なのかは作者は何もジャッジしていないんじゃないかな。

以上、やっぱりまっっっったくまとまりませんでしたがこれで終わり!(^v^)

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